本文へスキップ

九谷焼を美術館や図録で鑑賞するための解説を行っています

第38回 伝統九谷焼工芸展・選抜加賀

       展覧会パンフレット写真

 今回の伝統九谷焼工芸展での受賞作品には、例えば、大きく上に向かって広がる逆円錐の鉢(口径と高台の比が10:1以上ありそうです)、新しい釉薬で描いた吉祥文のある祭器、重ねて絵付けしたことで独特の色合いを出した組鉢などがあります。石川県九谷焼美術館などで見ている九谷焼とはその形・色合い・模様がかなりといってよいほど違った現代の九谷焼を見ることができます。
 美術館の学芸員からの解説によると、奨励賞を受けた3件がすべて組物であるように、それが近年の応募作品に見られる傾向のようです。九谷焼、とくに古九谷や吉田屋窯に見られる組物を思い浮かべさせる組鉢五客は、器体全体を五色で塗り埋め、それぞれに模様を金彩で描いているところなど、九谷焼の伝統的な技法や様式を工夫して取り入れ、技術保存と発展向上に努めていることがうかがわれます。


*この展示会のギャラリートークは平成27年5月16日九谷焼美術館で行われました。
 画像は同展パンフレットからのものです。